もうこんなん取れへんよ 膨張してハート
動物は窮地に追い込まれると、本来持ってる以上の力を出すと言う。
日本のことわざや慣用句でもそれは古来から認識されていて、「火事場の馬鹿力」や「窮鼠猫を噛む」と言った言葉を見ればわかることだ。
僕たちジャングル系は5/28にフリーライブとして初舞台をこなした。
K-Pro主催 フリーライブの登竜門ゲレロンステージ(会場 新宿Fu-)に出演をした。
最初のブロックだったため17:30に会場前に集合し、大量の芸人と一緒に開門を待つ。
エントリー料3000円を支払うと、楽屋に行き芸人たちは準備をする。
先ほどまで新宿に溶け込んでいた人間たちが、乳を放り出したババアになったり白塗りにしたりスーツを着たりして、楽屋は瞬く間に格闘ゲームの選択画面のようになる。
僕らジャングル系も例外ではなく、僕は訳のわからんカスタム革ジャンを着て、宮田はおばはんに変わっている。
静まりかえっている楽屋で、乳に詰め物をしたおばはんがネタを合わせようと言ってくる。
雰囲気的に小声でやろうとするも、僕の声がおばはんまで届かず二回くらい乳に詰め物したおばはんに「え?」と言われる。なんとなく落ち着かなくてトイレに3回くらい行く。こういう時、なぜみんなトイレに行くのだろうか。水の音を聞いて胎児の頃を思い出すのかもしれない。
そうこうしてる間に出番が近づき、下に降りる。セーラー服やババアやババアや白塗りがあちこちでネタ合わせをしている。
出番前のトリオの方々が、机にマスクを綺麗に折って一つずつ縦に並べていた。この人たちは僕にマスクをシャッフルされるかもしれない。というリスクを全く予期していない。
リスクマネージメントはこういうところから始めるべきである。
頭の中でマスクをカシャカシャとシャッフルしていると、「ジャングル系さん袖にお願いします」と言われる。
初舞台は結果的にネトフリ倍速視聴、素人高校生メロコアバンドの生演奏、アンミカのマルチ商法勧誘のごとく、テンポが速くなりネタが終了した。
笑いとセックスはテンポと間が命であるので、初舞台がセックスだとしたら「大丈夫大丈夫これから慣れてこ?」と、3個上の4回生のモーモールルギャバンが好きなロングヘアーの先輩に言われているのだろう。
舞台が終わればそそくさと楽屋を後にして、マックでYouTube配信のアーカイブを見て反省会をしてみる。
宮田は普段から緊張しているのをあまり見たことないやつだ。どしっとしてる印象しかない。
緊張というのは動物の本能であり、肉食獣に見つかった時準備運動なしで逃げるために心拍数を上げるらしい。
彼はおそらくオチ前で窮地に追い込まれ
「もうこんなん取れへんよ 膨張してハート」
と、全くネタになく一つ一つの言葉の意味はわかるが、繋がると全くわからない祝詞を唱えていた。
その祝詞のせいか、その夜は5月の割に半袖でも過ごせてしまう夏日であった。
okamoto kensetsu
ジャングル系の。
最近のコメント