info@junglegenre.com

映画『巴里のアメリカ人』『バンド・ワゴン』感想 『バンド・ワゴン』の方が後なのは意外

フリー芸人ジャングル系のサイトです

映画『巴里のアメリカ人』『バンド・ワゴン』感想 『バンド・ワゴン』の方が後なのは意外

#ネタバレ #映画感想 #巴里のアメリカ人 #バンドワゴン

映画『巴里のアメリカ人』の3枚の看板(背景・ポイント)

1.ヴィンセント・ミネリ監督。ジョージ・ガーシュウィン作1928発表の交響詩『巴里のアメリカ人』よりインスパイアされ1951年に制作された。

2.主人公のジェリー役は、『雨に唄えば』のジーン・ケリー。ヒロインリズはレスリー・キャロン(ジーン・ケリーに見いだされ、本作でデビュー)。

3.第二次世界大戦大戦後、巴里に残り芸術活動に勤しむ売れない画家のジェリー。ある日、日焼けオイルで財を成した実業家、ミロ(ニナ・フォック)に才能を見出される。ミロと繰り出した酒場にて19歳の化粧品販売員、リズに一目ぼれしたジェリー。しかし彼女は、有名な歌手アンリ(ジョルジュ・ゲタリ)の婚約者だった。

AmazonPrime Videoのサムネイル 引用元:https://www.amazon.co.jp/%E5%B7%B4%E9%87%8C%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%EF%BC%88%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88%EF%BC%89-%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%B3%EF%BD%A5%E3%82%B1%E3%83%AA%E3%83%BC/dp/B07QCR7899

【見た直後の感想】普通のメロドラマ×異常なミュージカル

夜8時ごろからAmazonPrimeで見た。
いわゆるカウチポテト状態。
少し眠気あり。

楽しくもどこか恋愛の切なさありのミュージカル、『ラ・ラ・ランド』の影響元、ジーン・ケリーは『雨に唄えば』のトップスター。
くらいの知識で見た。

結果として脚本はまさにその通りなのだが、ジーン・ケリーのミュージカル力がさく裂して、脚本に対し以上に陽気な男に見えたし、着地点もものすごくあっさりとハッピーエンドに落ち着いたように感じた。
その辺の「エモ」に振った演出はその後の進化著しいんだなあと思う。

ジェリーはパリで画家を目指す元軍人であり、アーティスト然としたプライドを持ち、批評を恐れる繊細さがある。性格的には文科系なのだとおもうのだけど、ジーン・ケリーのはつらつとした動きとミュージカルがそれを許さない。
映画は作る、ショーとして観客を楽しませる、どっちもやらなきゃならないのがミュージカル映画づくり(当時)のつらいところだな?

はっきりいってジェリーの絵にそれほどの魅力があるとは思えないのだが、とにかくミロに見初められ、とんとん拍子に個展を開くことに。このあたり、本当にジェリーの絵に魅力があったのか、まじでミロの目が恋にくらんでいただけなのかがよくわからない。
最終的に出会ったリズとジェリーはその後の人生、幸せに暮らしていけるのだろうか。恋を失ったミロの目にもジェリーの絵は魅力的に映るのか?

18分間のダンスシーンは奇怪な夢のようでA-haの『Take on me』を先取りしたような絵の現実化演出もあり、とても1951年のそれとは思えない。
ただ、俺はその前のジェリーと同じ下宿のピアニストアダムの脳内一人コンサートシーンの方が好きだった。一人でピアノ、ヴァイオリン、マリンバなどなどをかき鳴らし、観客として「ブラボー!」とスタンディングオベーションを送るアダム。
彼のエピソードが物語の本筋と有機的につながらず、クライマックスのダンスシーンでも登場もしなかったのは残念だ。

映画『バンド・ワゴン』の3枚の看板

1.ヴィンセント・ミネリ監督。1953年制作。もともとはフレッド・アステアが舞台で披露していた『バンド・ワゴン』(1931)が原案のひとつ。

2.主演はミュージカル王、フレッド・アステア。ヒロイン、ガブリエラはシド・チャリシー(他作品ではジーン・ケリーの相手役も)が務める

3.今や落ち目となった往年の名ミュージカル俳優トニー・ハンター。劇作家のマートン夫妻の後押しを受け、再起をかけた舞台バンド・ワゴンに劇作家ジェフリー・コルドバとタッグを組んで挑む。ヒロインとして引き込んだバレエ・ダンサーのガブリエラは一筋縄ではいかず……

【見た直後の感想】『巴里のアメリカ人』より楽しい、おそらくベタ?

明るく楽しい。
夜に電灯を消してみたので眠かったけど、最後までグミを食いながら頑張って見た。
一昨日には『巴里のアメリカ人』を観た。
ヴィンセント・ミネリが監督でオスカー・レヴァントが名脇役として出演しているという点で共通している。こんな名わき役なのに英語版しかウィキペディアがないなんて(オスカー・レヴァント)、誰かが怠慢してるんじゃないか!

『巴里のアメリカ人』(1951)から2年後、1953年の作品。なんとなく、『巴里のアメリカ人』が集大成的な作品なのかと思っていたら全然そんなことはなかった。しかし、あれから2年でこんな作品を作るのだからこの時期のミネリは脂が乗りきっている。

しかし、俺はこいつの癖を見抜いたぞ!後半に「舞台」的な大見せ場を用意しておいて、そこまでの物語はそのための前準備なのだ。『巴里~』でいうと言わずもがな終盤18分のパリのアメリカ人大ミュージカルだし、今回だと、『バンド・ワゴン』一座の興行ハイライト。

もちろんそれまでも見せ場はたくさん。今回で言うと、ゲーセンで「Shine on your shoes」とともに踊るフレッド・アステア、エヴァーグリーンナンバーとなる「ザッツ・エンターテインメント」、大失敗の打ち上げにおける「I love Luise」……。

だが、サビはどう考えたって最後の『バンド・ワゴン』公演のつるべ打ちである。はっきり言ってあの失敗したファウストもどきの舞台はどんなもんだったのかが一番気になる。だが、そこは単に最後の『バンド・ワゴン』のためのふりに過ぎないので、地獄のようなイラスト3枚くらいと、無表情でぞろぞろ会場から出てくるお客さんたちで雑に処理するのだ。

さて、本公演で何が一番印象に残ったかというと俺は、3つ子の赤ん坊が「銃があったら隣の2人を撃ってやりたい!」とうたう「Tripls」である。おそらく箱のなかで体を折りたたんで、3頭身の赤ちゃん状態で歌うトニー、リリー、コルドバ。みんなの笑いものになるだろう、もしかしたらおおスベリするかもしれない、このスリリングさこそが「ザッツ・エンターテインメント」!リリーの「Louisiana hayride」もよかった。

ただ、7幕構成で、特に話のつながりもなく最後はミステリー(といいつつ推理というよりはアクションメイン)の舞台がはたして本当に面白かったのか? しっちゃかめっちゃかなのでは??
時にはなるが、そこはそれ、おもしろくておお受けしたという設定には観客は勝てない。

また、どうみても50以上のトニーが20そこらに見えるガブリエルと恋仲になる(ポールから奪ってしまう)のもちょっとキモイなーという感じだが、まあそこに現代の品の良さを求めても仕方ない。最後にキスで終わるのがエンタメなのだから。

ガブリエルの歌声は別のシンガーによる吹き替え(シド・チャリシー の歌唱ではない)ということ。絶対に映画でないと成立しない舞台の組み方といい、最高の舞台という大ウソを映画だからこそ、成立させる、ヴィンセント・ミネリ、こいつぁエンターティナーである。

両者を踏まえての感想

『巴里のアメリカ人』が1951。『バンド・ワゴン』が1953。

2年でこの密度の作品を作るのはすごい。

明らかに、ミネリの脂が乗りきっている。

IMDbより引用

しかし、『巴里のアメリカ人』の方が先だというのは意外だった。

『巴里』後半の18分間、あそこが明らかに好き勝手やりすぎている。

ホップ・ステップ・ジャンプのその先で靴まで飛ばしちゃったような作品であり、

そこに行くまでのジャンプが『バンド・ワゴン』だという方がしっくりくるのだ。

しかし、構成の複雑さで言えば『バンド・ワゴン』の方が、未来的だともいえる。

また、落ち目のミュージカル俳優というアステアをメタ的にいじる視点も、ミュージカル文化がかなり成熟しきった証拠。

現代でもラディカルなやり口だと思う。