しらないひとがやってくる
と思うと、俺はどうしようもなく恐ろしくなって、押し入れに引きこもるのだ。
押し入れの中には体育館くらいの空間が広がっており、窓もあるのだが、その外側は白い靄になっていて、何かあるのか、あるいは何もないのか、そのどちらとも判別がつかない。
体育館の床の妙に大きな反響音のことは、学校に行かなくなってもうずいぶん経つので忘れかけていた。
びくっと体を震わせて、落とした方へ眼を向けると、何もない。
「みなさん、快適な空の旅へようこそ」
機内アナウンスは揺れる機内の狂騒などまるで嘘であるかのように、のんきな一言から始まった。
社内を占拠する2000頭のブタ!
人間は私一人──と言葉を脳で思い浮かべつつ、私自身人間なのか豚なのか確証が持てない。
家賃が安いからと洗面所に鏡一つない六畳一間に住んでいたのだ。
「ブー、ブブブーブー、ブブブ(お父ちゃん、空ってこんなに高いんだねえ)」
子豚のセリフを勝手に脳内で人間の言葉に変換しているのか、それとも私は豚だから豚の言葉がそのままわかるのか。
どうせなら、このまま豚の国で楽しく暮らしたいと思いつつ、「皆さんの考えている以上に豚はきれい好きなんですよ」という『坂上動物王国』の博士めいた人のセリフが浮かんで、フケツな私に豚は務まるのかと、不安な思いに駆られるのだった。
ドーーーーーーーーーーーーーン。
体育館の外で、何かものすごい爆発音がした。
さっきまでの、暗闇だとか、押し入れの外からやってくる知らない人だとかへの恐れも忘れて、僕は外で何が起こっているのかを探る。
一泊おいて、窓から大量の豚が飛び込んでくる!
ブヒブヒ、ブーブー。
なにをいっているのか、まるでわからない。
──と、考えている、間にも豚の数は増し、体育館中酸素濃度は下がり、代わりに豚濃度が上がっていく。
外に出ようともがいても、豚の波にのまれてしまう。
仕方なしに、手近な一匹にしがみついた。どんどん、体は圧迫されていく。
豚に潰されて、頓死する。
<今日はここまで>
ジャングル系のパッションあふれるツッコミ。
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