映画『エルヴィス』ネタバレ感想 豪華絢爛に「暗」を描く
目次
映画『エルヴィス』の3枚の看板
1.いわずと知れたロカビリーの創始者エルヴィス・プレスリーの伝記映画。エルヴィスを『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でマンソン・ファミリーの一員を演じたオースティン・バトラー、トム・パーカー大佐を名優トム・ハンクスが演じる。
2.上映時間159分で、ロック界の伝説「エルヴィス」を殺したのは誰か?を描く。物語はエルヴィスのマネージャーを務め、その収入の50%を搾取するなど詐欺的行為から死後告訴を受けたトム・パーカー大佐の視点から描かれる。果たして彼がエルヴィスを殺したのか?そうでないなら誰(何)なのか?
3.映画・音楽ライター宇野維正氏のYouTuber企画ムービー・ドライバー第2回にて取り上げられていたので宮田バイザーは見に行った。宇野氏の評価は上々。
【劇場レポート】エルヴィス愛はいまだ健在
ロカビリー調のシャツにエルヴィスTのじいちゃんやあんちゃんが駆けつけており、臨場感の味わえるTOHOシネマズ通常スクリーンにて鑑賞。
俺自身にプレスリーへの愛着はなく、曲も有名どころを聞いたことがあるくらい。
最後に、エルヴィスは史上最も売上を得たソロ・アーティストだという字幕が出る。まじで、それ、いまだにかよ。
詐欺師、snowmanについて
ジャニーズにsnow manというグループがいる。「なんで雪男なんだよ、もっとかっこいいグループ名をつけてやれよ」と俺は以前から思っていたのだが、その謎が解ける。ぱっときらめいて、数時間後には溶けてなくなる、客を笑顔で帰らせる稀代の詐欺師=ショーマンということで、アメリカのショーマンシップにあこがれを持ってジャニーズを創業したジャニー北川氏ならばなるほどつけそうな名前だと思った。
本作は、そんな稀代の詐欺師──トム・パーカー大佐の語るエルヴィスの生涯。エンドロール前にも出てくる通り、プレスリーの財産をかすめ取り、それをカジノで費やすという、昭和アメリカガー●ーみたいなことをやっているパーカー大佐。エルヴィスを時に親のように見守り、やはり金づるとして酷使し、ショーマンとして膝をつき、敵としてあい向かう。
この、ヴィランの視点から描くというのが、この映画を近年ブームとなっている伝説的ミュージシャンの伝記映画のなかで差別化する要素だったんだろうなと思う。
ただ、そもそもトム・パーカー大佐というヴィランの存在を知ってるのはそもそもエルヴィスのことをそこそこ知っている人だけだわなあ。その割合が本国ではどうなのか、日本からは測りかねる。
【プラス要素】159分があっという間!
エルヴィスの孤独と歴史がぎゅうぎゅうに詰まっており、3時間という時間がジェットコースターのように感じられた。画面を数分割したり、漫画みたいにしたり、当時の映像っぽくしたり。工夫が詰まっていて、この映画自体をショーにしよう、というハリウッド心が感じられてたいへん得した気分になる。見て損はない。
最初の、ギラギラのワーナーブラザーズロゴから、エルヴィスのベルトバックル、そこから万華鏡のように引き込まれていくギラギラ感は、やっぱり劇場で味わいたい。味わってよかった要素だ。
【マイナス要素】もっとエルヴィスの「陽」の面も見せてくれ!
あまりエルヴィスの事を知らない俺のような観客にはやや優しくないというか、結局彼が音楽的にどのように革新的で、彼の音楽はどのように作られ、どのように音楽史に名を遺したのかがよくわからなかったのは残念だ。監獄に行きそうになったとか、R・ケネディ暗殺を受けてのステートメントだとか、大佐の裏切りだとか、そういう状況を歌詞と重ね合わせるのは非常にうまいのだが、その分曲が映画に奉仕してしまっていて、本来それらがもっと広く間口が広がっていることがいまいち伝わらなかった。パフォーマンスのシーンで言えば、最初の女たちを狂乱させるサン・レコード時代のステージが最もよかった。そこから先はどちらかと言えば苦しそうな状況が続く。
この映画の時点で159分かかっているわけで、そんなに丁寧に見せてほしけりゃエルヴィス(本物)
の映像をあさってみやがれということかもしれないが。
まとめ
思ったよりもずっと豪華な伝記映画だった。
俺がエルヴィスを観るきっかけとなった宇野氏は映画という文化がこれまでのように娯楽の王様ではいられない時代を予見する発言を何度も行っており、それに従うと、この『エルヴィス』の豪華さを映画館で堪能できるのもいつまでか…と思う。
マイナス面で言えば、もうそんなことはわかってみているだろう、すでに映画も何本も作られているし、ということかもしれないが、エルヴィス映画の決定版ならば、彼のスターとしての一面をもっと分厚く描いてほしかった。
でも、劇場で見て良かった。
ジャングル系のパッションあふれるツッコミ。
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