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村上春樹の鼠三部作の感想 Don’t trust under 25.

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村上春樹の鼠三部作の感想 Don’t trust under 25.

俺はなんとなく村上春樹のことをいけ好かないと思い、ふと『風の歌を聴け』を読んではわかんねえなあと思い、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を読んでは「エレベーターの下り長すぎ―」となり、結果あんまり読破せず、というよくある状況だったのだが、『羊をめぐる冒険』から読み始めるべきだった。

加えて、25を超えてから読んだ方が良い。

25歳以下で鼠三部作にシンパシーを感じている奴は、寂寥感や都会のうつろさといったモードが好きなだけ!

間違いないね。

Don’t trust under 25.

村上春樹自身、『ねじまき島クロニクル』までは社会的なものからのデタッチメント(アタッチメントの逆。距離をおくこと・一線をひくこと)を標榜していたと話している。

25歳以下でデタッチメントするって、どういうことなんだ。

もっとガッツを持て!

といいつつ、俺が29歳のみそらでわかったような気になるのもどうなんだ。

1978年の29歳と2022年の29歳はまるで違い、そして春樹も結局はアタッチメントに「アタッチ」するようになる。

『風の歌を聴け』の感想

数年前に読んで、「意味わかんね~。やっぱ好きじゃないわ」と見切ったのだが、今は逆によくわかる(気がする)。気が付いたらセックスしていたりとか、感情が薄らぼんやりして生活感皆無だったりするのって、セックス・金・欲望を抽象化して「でもそれより強いものがなんにもない俺(=世界)」を描いているような(別にそれらに満たされているわけでは無)。鼠だったんだな、お前は。私小説を、ある気分を象徴する「シーン」に仮託して、成分が薄れたら捨てる、作業を繰り返すとこういう小説になる。映画本編より予告編がおもろいやんみたいな感覚。確かに結果としてあんまり「古い」感じがしないのはスゴイ。

『1973年のピンボール』の感想

鬱々としている。ピンボールは役に立たないものの象徴。一時の興奮を生み出して、売り買いの果てに暗い倉庫に用済みとばかりに捨て置かれる。双子は役に立たないものを愛する幼年期。鼠は幼年期の終わり。1973年、村上春樹は24歳。1973年のピンボール。ゲームはいつか終わる。あれだけ興奮したボール遊びも無に帰すし、終わりが来なければいつの間にか飽きてしまう。このぐらいの勝手な解釈で読んでいけばいいんやハルキなんて。

『羊をめぐる冒険』の感想

ずっるー、自分の暗部に日本の敗北と戦えなかった自分の敗北感飲み込ませて大爆発させてるやんけ! と思った。でも同時にとてもおもしろかった。物語としてはもう少し起伏が欲しいような気もするが、それでもちょっと物語に回帰すればこのくらいの冒険はできるんだぜ、と33歳、小説家として視界が開けてきた村上春樹に言われている。とはいえ、自分を殺したところで名前のない僕の人生は続くし、「こと」がはじまれば傍観者ではいられない。なぜかジェイは女だと思っていた。

『ダンス・ダンス・ダンス』も読む。