『七人の侍』感想 ──キャラと空間がよきゃそりゃ名作よ ※ネタバレ
目次
見た直後の感想
そらまあしっかり面白い。
前半は早口なうえに方言で録音も悪いのでリマスター版にもかかわらず全然聞き取れなかったがそれでも面白かった。
表情のとらえ方と空間の使い方が抜群だからだ。
こういう映画だからノンバーバルで評価されたんだなあと体験として実感した。
特に武士たちのキャラクターの立て方が抜群で、戦の準備段階が一番楽しかった。菊千代という存在を完全に生かし切っていたと思う。与兵の馬から落馬するシーンなど、いまでも劇場で笑いが起こっていたもの。
逆に構成に大きな影響を与えた戦のシーンはややだれた。結局野武士は百姓をなめ切っているため、おおむねこちら側の優勢で事が運ぶのだ。もちろん実際に戦をするとなれば囲い込んで多勢に無勢の状況をつくるのが定石であり、考え抜かれた手法だとは思う。それにしても砦に火をつけられたにもかかわらずほとんど無策で攻めてくるし、すぐに馬をおいてふらふらしちゃう野武士たちはひどかった。
久蔵が単独で2人倒して火縄銃を持ち帰ってこれたのもチートすぎる。あまりに勝四郎がほめるので裏切者フラグかと思ったら死亡フラグだった。
でも死ぬのも相当後半だしなあ。
中盤、農民たちが落ち武者狩りをしていた事実が発覚するシーンでこの映画の深みが一段と増した。農民たちは決して正義ではないのだ。臆病で、優勢となれば活気づいて、米や酒を蓄え混んでいて……。そんな悪党を悪党から守る義賊、いや、官兵衛らも何人を惨殺してきただろうか。
のちの痛快なアクション作品に多大な影響を与えながら、善男善女不在のリアリズムが作品を支配している。
「今回もまた、負け戦だったな」
Story
ときは戦国時代末期。徒党を組んだ野武士が農村を襲い、乱暴狼藉を振るっていた。とある村にも野武士の手が伸びる。
利吉(土屋嘉男、すんごい男前)、万蔵(気が弱く娘を溺愛している)らは村の長老の教えに従い、食い詰めた侍を雇い、野武士たちを迎え撃つことを決意する。そうして集まった七人の侍。
官兵衛(志村喬):窃盗犯から人質の子どもを無傷で救い出した七人の要であり戦術家
菊千代(三船敏郎):明るくひょうきんかつ豪放磊落で腕っぷしの強い男。実は農民出身
岡本勝四郎(木村功):育ちが良くまじめな若武者。万蔵の娘と恋に落ちる
片山五郎兵衛(稲葉義男):扉の陰で切りかかろうと待ち構える勝四郎を一瞬で見抜いた男。官兵衛についで策に長じる
七郎次(加東大助):官兵衛の古い中。気遣いに長けている
林田平八:一度も人を斬ったことがなく薪割りで孤高をしのぐ明るい男。五郎兵衛いわく剣の腕は中の下ながら仲間にいることで明るくなる男
久蔵:剣の修業として果し合いを行い相手を斬るところを官兵衛らに見いだされた凄腕の剣客。敵のなかへ単身乗り込み2人倒して火縄銃を奪ってくるなどチート級の有能
巨匠黒沢明の言わずと知れた娯楽大作。製作費は当時にして2億円を超える。ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞し、世界中にこよなく愛されている。また、漫画、ドラマなど幅広いサブカルチャーへ影響を与えている。
キャラクターが七割
見た直後の感想で描いたようなことはYouTubeの春日太一と町山智弘のトークショーで全部触れられていた。
こういうトークショーってなんぼもらえるんやろね。
七人の侍というが、正直なところクローズアップのされ方には明らかな偏りがある。
官兵衛、菊千代、勝四郎、久蔵の扱いが一軍で、五郎兵衛、七郎次、平八は二軍に感じた。
とはいえ、五郎兵衛には馬突破させ作戦で先頭に立つ見せ場がある。また平八は一番初めに死んでしまったのである意味仕方がないところがある。
一番かわいそうなのは七郎次だ。
侍入りも特にドラマなく官兵衛の昔の知り合いだからという感じだしな。
こうしてみると、数字の入っている名前が多い。
4、5、7、8、9(久)。
だからなんということもないけど。ここからワンピースの都市伝説みたいに話を展開させたかったよ。
そう、名にゃ知らんけどワンピースは「七人の侍」に影響されてるんやろ?
https://medium.com/@timeslip.jp/one-piece%E3%81%A8%E4%B8%83%E4%BA%BA%E3%81%AE%E4%BE%8D-127294770cfb
21世紀初頭に最も売れたコミックのひな形として確かに納得の少年漫画的お話だった。
だから、扱いの差が生じるのも当然である。
どのキャラがどれに当てはまるなんて話は喉笛を竹やりで突かれたってしたくないが、菊千代が熱血漢でありトリックスターも兼ねた主人公で、久蔵がクールなプロフェッショナル、官兵衛が主人公の師匠的立ち位置活三部、勝四郎が未熟ながら主人公たちの「正義」を担保するイノセントな若主人公だわなあ。
平八はとぼけたやさしさ&お笑い担当で、五郎兵衛は副長タイプ、七郎次はバランスと包容力の人。
これだけ王道のキャラクターをそれろ得られたらそりゃあ面白い。
『七人の侍』の面白さの7割はキャラの面白さであり、だから今みても面白いのだと思う。
空間の使い方が3割
残りの3割は黒沢明の空間の使い方のうまさだ。
特に菊千代が仲間に加わるシーンにおける酔っぱらった菊千代とほかの侍の刀を巡った追いかけっこ。
個人的には終盤の武者シーンよりもこっちの方がアクションに感心した。
狭い馬小屋の中でただ酔っ払いから刀を奪ってから買っているだけなのに、
カメラの視界の限定と空間全体の移し方が巧みなためものすごく躍動感のある争奪戦をしているように見える。
後半の野武士との騎馬戦もその背景にあるものを想像すればすさまじいシーンであることはわかる。
まず馬一頭映画に使うのにいくらかかるのかという話だ。
わざわざ墨を混ぜたという雨が白黒の画面に映える。正直、カラー映画では逆にこの迫力は出なかっただろう。
そう、漫画である。
白黒だからこそどこか戯画めいた状況であってもリアリティを崩さずまた画的なケレン味も残すことができるのだ。
カラー映画ではこうはいくまい。
ただ、惜しむらくは野武士らについての描写がほとんどないことである。
NPCが大量に襲ってきているようにしか見えないのでどうせ勝つんでしょという感覚しかしない。
折角「種子島」が相手側の最大の脅威なのだからその脅威をより細かく描き、それを持っている敵を討ち取る一幕を作ればよかった。
相すれば久蔵のちょっとどうかしすぎている戦績のチートっぷりも解消されたはずである。
何言ってるかわからん
何言ってるか全然聞き取れないのは俺だけかと思いきや、前掲の解説動画でも触れられているとおりみんなそうらしい。
それに加え、日本語はどんどん聞き取りやすく変化しているという説も聞く。方言も崩壊してきてるしな。
(英語だってグルーバル言語となるにつれて元の発音とはずれて誰でもききとりやすくなってるそうだ)
だから、どんどんこの映画で言っていることはわけわからない世代になっていくはずだ。
デジタルリマスターによる音声の改善はあるにしても。
そう思うと今まだ方言の感触をまだ耳に覚えている世代として見られたことは僥倖だったのかもしれない。
まとめ(95点)
文句もあったが面白いのだからそれでいいのだ。
面白いのが一番なのだ。
それにしても利吉役の土屋嘉男は眉目秀麗でびっくりした。
利吉が妻の名前を寝ながらにしていうとき「しの」といっていた気がしてそれじゃ「しの」だらけじゃねえかと疑問に思ったのだがそれは俺の聞き違いかなあ?
ジャングル系のパッションあふれるツッコミ。
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