『シェルブールの雨傘』デジタルリマスター版感想──80点 ギイは悪い男か?
第17回カンヌ国際映画祭グランプリ・カトリーヌ・ドヌーヴ代表作のひとつである『シェルブールの雨傘』を観た。全編音楽のみで地の会話が一切ないミュージカルというのは今の時代でもかなり耳目を集める物珍しさだよなあと思う。
『ララランド』の元ネタ的なイメージが俺の中で先行していた。しかも、なんとなく『ララランド』はずるく雰囲気をまねしたみたいな、こちらの方が本家本元だぜ、マスターピースだぜ的なイメージ。
デジタルリマスター版でみたのだけれど、まあ両作品を見た人ならば全員うなづけるとおり、話の骨子は共通しているよなあ。
あとは、色づかいか。
俺は本質的にストーリーと思想にしか興味がない人間で、あんまり映画の華麗さとか衣装とか技術とかに興味(センス)はないんだけど、見ててきれいなことくらいわかるよ馬鹿野郎!
あとはギイが情けなところをきちんとさらしたのが良かった。
反対にダメだったのはマドレーヌが大してバックボーンが描かれない書き割りキャラ感かなあ。ギイとジュヌヴィエーヴの物語とはいえ、そこはしっかり描いてくれないとなんか異物感が残るぜ。
そのあたり、古い映画だなあと思う。
一方、ジュヌヴィエーヴをめとってしまうローランカサールは別に描写不足だとは思わなかった。よく考えたら基本パリで暮らしている金持ちのおっさんというくらいの知識しかないのだけれど…。やっぱり求めてきたほうはそれで納得がいくのよな。
マドレーヌはずーっと受け身すぎ!
現代の映画ならギイとくっつくにしてももうちょっとひと悶着あると思う。
目次
ギイが悪いかジュヌヴィエーヴが悪いか問題
ギイと覚えにくい名前の女(ジュヌヴィエーヴ)の悲恋話。話は単純だが、画面の華麗さと曲で見せる映画と聞いていた。あとは『ララランド』の元とか、そのあたりの知識しかない。
俺が見ている限りギイを待てないジュヌヴィエーヴが悪いと思ったのだが、嫁はんはギイを「どうしようもないやつだ」と糾弾していた。
大学のフランス語の授業で一度見たという嫁はん。
所見の際は別に思わなかったギイの悪事に腹を立てている。それは、既婚者になったからという心境の変化も関係しているのか?
別にギイが死んだと思い込んだひまわりパターンじゃないんだから、しっかりギイを待っとけよと思うが、それが現実だろう。よくあったんだろう。
カタールの方も本当に善人ならギイを待ってから求婚しろと思う。アルジェリア戦争に行くということは死んだも同然ということだったのか。このあたり、歴史の知識がないことが悔やまれる。
しかし、俺の倫理観で言えば、そもそもほったらかしてカタールの方にいったジェヌヴィエーヌがひどい。しかし、傘屋の経営が思わしくなく、女一人では子供を育てていけないという事情もあったのかねえ。
そういえば、タイトルに雨傘ってなってるのにラストはガソリン屋で終わるんかい…なんだよなあ。
当時ガソリン屋はモダンな職業だったのだろうか。
ギイの難点
ギイも荒れ狂って車の整備を適当にしてけんかして出て行ったのはひどい。でもまあ恩給で暮らせるからいいやんという感覚も。当時のガソリンスタンドはもうかる仕事なのか。
マドレーヌはほだされて結婚した。嫁はんはまじめなマドレーヌを結局近くにいるからという理由でギイがうまいこと言ってたぶらかしていてコマしたことに一番腹が立ったようだ。しかし、マドレーヌも叔母さんの世話をメインで暮らしていたっぽいしまあ、最終的に幸せならいいじゃないのと思う。
といいつつ、マドレーヌの描写不足が数日たって引っかかっている。
傘屋がなくなっているところを発見したギイはそこそこ冷静だったのに、その後の生活で仕事やプライベートに支障が出るというのは妙にリアルだ。
全編歌いっぱなしのリアルからは程遠い映画だが、感情を高らかに歌い上げたりする場面は少なく、どちらかといえばマジの会話に節とメロディがついている感じ。
これって、いわゆるミュージカルのフォーマットとも違うよな。
そういうところがやっぱりアバンギャルドにうつるのだ。
水色とピンクは素敵。
まとめ
いうて、ストーリーは単純明快なのでいうことはあまりない。
画面の華麗さと音楽で見せる映画だ。
とはいえ、全員がそれなりに理性的な思考の上で結論を出したのはよかったと思う(マドレーヌの描写不足をのぞく)。
ジャングル系のパッションあふれるツッコミ。
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