カフカ『判決』――罪を感じろ ※ネタバレ
目次
読書メーター感想
主人公が感じていた罪のようなものへの気持ちだと思う。未必の故意(無意識)の加害者側の目線から、ついにそれが指摘されたときに自分を罰してしまう気持ちが彼を死に追いやったのではないか。
Story
主人公の男はロシアに移住した友人との関係に悩んでいる。友人はロシアに成功をつかみに出向いたものの社会的評価はからっきし。対して主人公は母を亡くすなど悲劇はあったものの事業は成功し資産家の娘との婚約もしているのだ。友人に婚約を打ち明けるべきかどうすべきか、要介護者の父に相談したところ、「お前に友人などいない」。予想外の指摘を受ける。
死に値する主人公の罪とは?
罪のようなものを感じるのです、と銀杏ミネタは『生きたい』で歌ったが、その罪とはどんな罪だろう?
この小説も罪の話であると俺は思う。
――なにしろタイトルは判決だし、主人公はほかならぬ要介護者の父から検事としての裁きを下されてしまうのだ。
これから判決をくだしてやる。おぼれて死ぬのだ!」
カフカ『変身/掟の前で』光文社文庫、2007,p.29
主人公を溺死へと追いやったその罪とは、「どうか弱者であってくれという未必の故意」だと俺は思う。
地位財という言葉がある。お金や不動産など、他人との比較による相対的な評価によって得られる価値のことだ。
地位財を得るために必要なのは?
――労働?
――資産?
否、もっとも必要なのは「他人の不幸」なのである。
足を不自由にし、主人公に下着を変えてもらわなければならなくなった父。
ロシアに飛び出し、孤独にあえぐ友人。
主人公は彼らから地位財を不当に搾取し、そのつけを見事に支払わせられたのだ。
お前の友だちと私はすばらしい同盟を結んでいた。
カフカ『変身/掟の前で』光文社文庫、2007,p.26
かくゆう俺も地位財を奪ったり奪われたりしながらこの年まで黙って生きてきたわけである。
あなただって、黙って他人――それどころか友人や親類の懐に手を突っ込んでいる自覚が実はあるんじゃないのか?
「ある物語 Fのために」というこの話の但し書きには、カフカの贖罪の意が込められているはずだ。
ちなみに青空文庫でよめるよ↓
ジャングル系のパッションあふれるツッコミ。
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